北海道日本ハムファイターズのInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/13
「なぜあの球団の投稿は伸びるのか」という悩みに向き合う
自社のInstagramを毎日更新しているのに、保存数もコメントも伸びない。競合や有名アカウントの投稿を眺めては「うちとは規模が違うから」「業種が違うから参考にならない」と諦めてしまう——SNS担当者であれば一度は通る道だと思います。
しかし、フォロワー数や予算の差を言い訳にする前に見ておきたいのが、地方球団でありながら全国のファン・非ファン層の双方から継続的に話題化されている「北海道日本ハムファイターズ」のSNS運用です。プロ野球というニッチなコンテンツでありながら、野球にさほど興味がない層の目にも留まる投稿を作り続けている背景には、偶然ではなく「型」があります。本記事では、公開されている情報をもとに、この運用がなぜ支持されているのかを分解し、業種の異なる企業や店舗のアカウントでも応用できる具体的なポイントに落とし込みます。フォロワー数やエンゲージメント率といった裏付けの取れない数字は扱わず、あくまで「型」と「考え方」に焦点を当てます。

前提:北海道日本ハムファイターズを取り巻く環境の変化
分析の前に、このアカウントが置かれている状況を整理しておきます。北海道日本ハムファイターズは2023年、本拠地を長年慣れ親しんだ札幌ドームから、北広島市に新設した「エスコンフィールドHOKKAIDO」へ移転しました。この球場は「北海道ボールパークFビレッジ」という複合エリアの中核施設であり、天然芝と開閉式屋根を両立させた設計や、観戦以外の目的でも訪れたくなる周辺施設を含めて「野球観戦」そのものの体験を再定義するコンセプトで報道されてきました。
さらに2022年から指揮を執る新庄剛志監督(通称BIG BOSS)は、現役時代からメディア露出の多い人物であり、就任後もファッションや発言、パフォーマンスで継続的に話題を提供しています。つまりこの球団のSNSは「発信するネタが常に供給され続ける環境」を、球場という「箱」と監督という「人」の両輪で持っている、という特殊な強みがあります。これは真似できない部分でもあるため、後述の「注意点」で改めて触れます。
伸びている理由① 「発信し続けられる舞台」を自前で持っている
多くの企業アカウントが投稿ネタに困るのは、そもそも「発信すべき出来事」が定期的に発生しないためです。ファイターズの場合、エスコンフィールドという新しい本拠地そのものが継続的な話題の供給源になっています。開業からある程度年数が経った現在でも、季節ごとの球場の表情、試合前後のイベント、ファンサービスの様子など、"施設"を軸にしたコンテンツが尽きません。
これは店舗や施設を持つ業種(飲食、宿泊、小売、地域観光など)にとって特に参考になる考え方です。「商品を撮る」だけでなく「場所そのものを発信の資産にする」という発想に切り替えることで、投稿ネタ切れを防ぐことができます。
伸びている理由② トップ自らが"メディア"になっている
新庄監督のように、組織のトップ(経営者・店主・代表)が個性的な発信源になっている場合、SNS上での二次拡散が起きやすくなります。監督のオフショットやコメントは、野球ファンでなくても「気になる人物」として消費されるため、アカウントのリーチが野球ファンの外側にまで広がる構造ができています。
中小企業や個人店舗においても、「店主・代表の人柄」を前面に出すアカウント運用は同様の効果を狙えます。商品説明だけのアカウントより、「誰が発信しているか」が見える化されたアカウントの方が感情移入されやすく、コメントが生まれやすい傾向は、業種を問わず共通する原則です。
伸びている理由③ 「選手の素顔」を見せる投稿設計
プロ野球選手は本来、試合中の姿しか一般には見えない存在です。だからこそ、練習中の何気ない表情やベンチでの様子、遠征先での一コマといった「オフショット」が強いフックになります。公式アカウントが選手の"人間味"を切り取ることで、競技そのものへの関心が薄い層にも「この人を応援したい」という感情を作り出しています。
これは人材業・スクール・士業など「人が商品」の業種に置き換えやすい発想です。サービス内容の説明よりも、担当者やスタッフの日常・人柄を見せる投稿の方が、フォローする動機になりやすいという点は共通しています。
伸びている理由④ ファンを「観客」から「参加者」に変える設計
球場でのファンの盛り上がりやリアクションを投稿・紹介することは、ファン自身を"コンテンツの一部"にする行為です。自分や自分の応援するグッズ・応援スタイルが取り上げられるかもしれないという期待感は、アカウントをフォローし続ける理由になり、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の投稿意欲も高めます。
企業アカウントであれば、顧客の声・利用シーン・レビューを"紹介する側"に回ることで、同様に顧客参加型の構造を作ることができます。
投稿の「型」を分解して整理する
ここまでの内容を、応用しやすいように「投稿タイプ」ごとに整理します。
| 投稿タイプ | 狙い | 応用できる業種の例 | 明日から使える変換ヒント |
|---|---|---|---|
| 施設・空間紹介型 | ブランドの世界観・場の魅力を伝える | 飲食店、宿泊施設、店舗全般 | 「商品」ではなく「空間・雰囲気」を主役にした写真を1枚混ぜる |
| 人物オフショット型 | 発信者の人柄で感情移入を作る | 個人店、士業、スクール、代表発信型の企業 | スタッフの素の表情・裏側の作業風景を定期的に挟む |
| イベント・季節行事型 | 定期的な話題供給源を確保する | ほぼ全業種 | 年間の行事・季節ネタをあらかじめカレンダー化しておく |
| ファン参加・紹介型 | フォロワーを"当事者"にする | 小売、飲食、コミュニティ運営 | お客様の投稿やコメントを紹介する固定枠を作る |
| ビハインド・裏側型 | 「知らなかった一面」で興味を引く | 製造業、飲食(仕込み風景等) | 完成品ではなく制作過程を短尺で見せる |
世界観のつくり方:一貫したトーン&マナー
こうした複数の投稿タイプを扱いながらも、アカウント全体としてまとまって見えるのは、写真のトーン(色味・構図)やキャプションの文体が一定の範囲内でコントロールされているためです。フォーマットが毎回バラバラだと、フォロワーは「このアカウントらしさ」を認識できず、フィード上で埋もれやすくなります。
世界観を作る際に意識したいポイントは次の3つです。
- 色味・彩度のトーンを統一する(明るすぎる/暗すぎるを混在させない)
- キャプションの一人称・語尾のキャラクターを固定する(丁寧語か親しみ口調かをブレさせない)
- 「毎回撮り下ろし」にこだわらず、既存素材の再編集・再構成でも運用を継続できる仕組みを作る
明日から試せるチェックリスト
分析だけで終わらせず、実務に落とし込むための具体的な手順を用意しました。
- 自社の「発信し続けられる舞台」を棚卸しする(店舗、工房、オフィス、季節行事など、継続してネタになる場所・出来事をリストアップ)
- 発信者(代表・スタッフ)の中で、顔出し・人柄発信ができる人を最低1名決める
- 直近1か月の投稿を見返し、上記の表の5タイプに分類し、偏りがないか確認する
- 「商品だけ」の投稿と「人・空間・裏側」の投稿の比率を、体感で7:3程度から始めて調整する
- お客様の声・投稿を毎月1回は紹介する固定枠をカレンダーに入れる
- 写真の色味・キャプションの文体について、簡単なルール(NGワード・トーン)を1枚のメモにまとめ、複数人で運用しても崩れないようにする
- 季節・年間行事のネタを、3か月先まで先出しでリスト化しておく
注意点:そのまま真似すると失敗するポイント
ここまで紹介した「型」は業種を問わず応用可能ですが、ファイターズの運用がうまくいっている背景には、新しい本拠地の開業や監督交代といった、大きな話題性を持つ出来事が土台にある点は見落とせません。話題の"種"が乏しい状態でファン参加型の企画だけを真似しても、期待した反応は得にくいでしょう。まずは自社にとっての「継続的な話題の種」が何かを見極めることが、模倣ではなく応用の第一歩になります。
また、選手やスタッフの素顔を見せる投稿は、本人の同意や社内ルールの整備が前提です。無断での顔出しや、意図しない発言の切り取りはトラブルの原因になるため、社内での運用ルール作りは事前に済ませておく必要があります。
出典・参考にした公開データ
本記事の一般的なSNS利用動向に関する記述は、以下の公開情報を参照しています。
- 総務省「情報通信白書(令和6年版)」における国内のSNS利用に関する記述
- 総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」における年代別SNS利用率(Instagramが若年層で高い利用率を示す傾向)
- Instagram運営元(Meta)が公表した国内月間アクティブアカウント数(2019年公表時点で3,300万を超えるとされる数値)
- 日本野球機構(NPB)が公表する観客動員データ(本拠地移転以降、動員数が増加傾向にあることが各種報道で伝えられている)
なお、北海道日本ハムファイターズ公式アカウント固有のフォロワー数・エンゲージメント率については、裏付けの取れる最新の公表値がないため本記事では扱っていません。
同じスポーツ・エンタメ業種や、地域密着型のブランドが実際にどのようなSNS運用をしているかは、unyouの事例データベース(/cases)でも他の実例を紹介しています。あわせて確認することで、今回の分析を自社の状況に合わせてさらに具体化できます。
まとめ
北海道日本ハムファイターズのInstagram運用が支持されている背景には、「発信し続けられる舞台(球場)」「メディア化されたトップ(監督)」「選手の素顔」「ファン参加型の設計」という複数の要素が組み合わさっています。これらは規模の大きさに依存する要素ではなく、投稿タイプの整理・発信者の人柄の見える化・顧客参加の仕組み化といった形で、業種を問わず自社アカウントに応用可能です。まずは自社の「継続的な話題の種」を棚卸しするところから始めてみてください。
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