じゃらんの公式Instagramを見て、「同じ観光・宿泊業なのに、なぜあんなに保存されるコンテンツを作れるんだろう」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。自社のアカウントでも絶景やグルメの写真を投稿しているのに、いいねも保存も伸び悩む。ネタは尽きてきたし、キャプションも似たり寄ったりになってしまう——そんな悩みを抱えるSNS担当者の方は、観光・宿泊・EC問わず少なくないはずです。
じゃらんのアカウントが支持されている背景には、偶然のバズではなく、再現可能な「型」と運用の設計思想があります。本記事では、公開されている投稿内容や運用の傾向を分析しながら、フォロワー数やエンゲージメント率といった確証の持てない数値には触れずに、投稿の構造・世界観の作り方・エンゲージメント施策を分解します。そのうえで、地方の宿泊施設や観光関連事業者、中小企業のSNS担当者が「明日から真似できるポイント」に落とし込んでいきます。
じゃらんとはどんなアカウントか
じゃらんは株式会社リクルートが運営する国内最大級の宿泊・旅行予約サービスです。宿泊施設や観光スポットの検索・予約に加え、旅行者の口コミやレビューを大量に蓄積していることが最大の強みで、この「膨大な旅行者の生の声とビジュアル素材」がInstagram運用の土台になっています。
自社で撮影したプロ写真だけに頼るのではなく、実際に旅行したユーザーが投稿した写真や口コミをコンテンツの起点にできる点は、一般的な単独店舗や中小企業のアカウントとは条件が異なります。ただし、この「ユーザー投稿を軸にした情報収集・再編集型」の考え方そのものは、規模の大小にかかわらず応用可能です。

なぜ伸びているのか:3つの構造的な理由
分析すると、じゃらんのInstagram運用には共通する3つの構造があります。
1つ目は、検索ニーズに直結したテーマ設計です。「関東 日帰り温泉」「京都 穴場カフェ」のように、ユーザーが実際にGoogleやInstagramの検索窓に打ち込みそうなキーワードをそのまま投稿テーマに落とし込んでいます。単なる「きれいな景色」ではなく、「〇〇県 紅葉スポット5選」のようにニーズ起点でまとめる構成です。
**2つ目は、保存されることを前提にした情報設計です。**旅行系コンテンツは「今すぐ行けないが、いつか使いたい」という需要が強いジャンルです。じゃらんの投稿は単一スポットの紹介ではなく、複数スポットをリスト化した「まとめ投稿」の比率が高く、これは保存(サイブ)を狙った典型的な設計といえます。
**3つ目は、投稿の再利用性です。**旅行者の口コミやユーザー投稿(UGC)をベースにした企画は、撮影コストをかけずに継続的な投稿本数を確保できます。これにより、担当者が疲弊せずに投稿頻度を維持できる仕組みになっています。
投稿の「型」を分解する
じゃらんのような観光・旅行系アカウントに共通する投稿パターンを整理すると、以下のように分類できます。
| 投稿の型 | 目的 | 狙う反応 |
|---|---|---|
| エリア別まとめ(〇〇県 絶景5選など) | 検索流入・保存獲得 | 保存・シェア |
| 季節限定企画(紅葉・花火・雪景色) | 旬のニーズに合わせた話題化 | いいね・リーチ拡大 |
| ユーザー投稿の紹介(UGC) | 撮影コスト削減・共感形成 | コメント・タグ付け |
| 周遊ルート提案(1泊2日モデルコース) | 実用性の提供 | 保存・プロフィール導線 |
| リールでの現地映像 | 発見タブでの新規リーチ | 視聴維持・フォロー転換 |
このように「型」を先に決め、そこにテーマ(エリアや季節)を差し込んでいく運用は、ネタ切れを防ぎ、投稿の質を一定水準に保つうえで非常に有効です。中小企業のアカウントでも、まず自社に合う型を3〜5個定義するところから始めると、企画会議の負担が大きく減ります。
世界観のつくり方:統一感と「その他大勢」からの脱却
Instagramのフィードは、1投稿単体ではなく「グリッド全体の印象」で見られる傾向があります。じゃらんのような大規模アカウントは、以下の要素で世界観の統一を図っています。
- 文字入れのフォント・配色・レイアウトのテンプレート化
- キャプションの語尾・トーン(親しみやすい丁寧語)の統一
- サムネイル1枚目に必ず「地名+ベネフィット」を入れる構成
- 縦長(4:5)フォーマットでの統一による、フィード上の面積確保
特に「1枚目の文字入れルールを固定する」ことは、フォロワーがスクロール中に一瞬で内容を判断できるようにするための工夫であり、投稿者側の意思決定コストも下げます。これは自社アカウントでも即日導入できる施策です。
エンゲージメントを生む仕掛け
エンゲージメントを高める観点では、以下のような仕掛けが観察できます。
- 保存を促す文言をキャプション末尾に明記する(「行きたい場所リストに保存してね」など)
- コメントを誘発する質問形式の投稿(「あなたはどっち派?」形式)
- ハッシュタグでUGCを収集し、そのまま再投稿として活用する導線
- リールとフィード投稿を役割分担させる(リール=新規リーチ、フィード=保存・比較検討)
ここで重要なのは、これらは特別な予算や大規模な体制がなくても再現できる、運用設計上の工夫だという点です。
明日から試せる実践チェックリスト
自社アカウントに落とし込む際は、以下の順番で見直すと着手しやすくなります。
- □ 自社の投稿を過去20件並べて、パターン(型)がいくつあるか数える
- □ 保存されやすい「まとめ・比較・ランキング」形式の投稿を月1本以上組み込む
- □ 投稿1枚目の文字入れフォーマット(フォント・配色・文言の位置)を固定する
- □ お客様の投稿・口コミ・レビューを許諾のうえで紹介する企画を月1回設ける
- □ キャプション末尾に「保存」「コメント」を促す一文を必ず入れる
- □ リールとフィードで狙う目的(新規リーチか、保存・比較検討か)を分けて設計する
- □ 月末に「保存数が伸びた投稿」を振り返り、次月の型として再利用する
いきなり全てを実行する必要はありません。まずは1と3から着手し、投稿の「型」を可視化するだけでも、企画の再現性は大きく変わります。
公開データから見るSNS活用の重要性
こうした運用の重要性は、公的な統計データからも裏付けられます。総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(令和5年度)では、Instagramの利用率が若年層を中心に高い水準で推移していることが示されており、10代・20代のInstagram利用率は他の年代と比べて高い傾向が続いています。
また、Instagramの日本国内における月間アクティブアカウント数について、Facebook Japan(現Meta Japan)は2019年に3,300万を超えると公表しており、国内におけるInstagramの生活インフラ化を裏付ける代表的な指標として現在も引用されています。
さらに、リクルートのじゃらんリサーチセンターが継続的に実施している「じゃらん宿泊旅行調査」では、旅行先の検討・情報収集の手段としてSNSや口コミが重要な役割を果たしていることが繰り返し報告されており、旅行・観光業においてビジュアルベースのSNS運用が意思決定に与える影響の大きさがうかがえます。
これらのデータが示すのは、「見た目が良い投稿を作ること」自体が目的なのではなく、「意思決定の初期段階にいる生活者に、検討材料として選ばれる情報を届けること」がSNS運用の本質だという点です。じゃらんの投稿設計は、まさにこの原則に沿って組み立てられていると読み解くことができます。
自社アカウントに応用する際の注意点
大規模アカウントの型をそのまま模倣する際に陥りやすい失敗もあります。UGCを紹介する場合は必ず投稿者への許諾を得ること、まとめ投稿の情報が古くならないよう定期的に見直すこと、そして「保存を狙う投稿」と「フォロー・来店を狙う投稿」の比率を極端に偏らせないことです。保存されるだけで問い合わせや来店に繋がらなければ、事業目的とのズレが生じてしまいます。型を取り入れる際は、自社のゴール(予約・来店・資料請求など)に合わせて、投稿の最後の一押し(CTA)を必ず設計に組み込むようにしましょう。
まとめ
じゃらんのInstagram運用が支持されている理由は、特別な裏技ではなく、「検索ニーズに合わせたテーマ設計」「保存を意識した情報のまとめ方」「UGCを活用した継続可能な投稿体制」「1枚目の文字入れなど世界観の統一」といった、地道な設計の積み重ねにあります。これらは規模の大小を問わず、宿泊施設や観光関連事業者、店舗アカウントでも取り入れられる考え方です。まずは自社の投稿を型に分解するところから始めてみてください。
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