「Instagramを頑張っているのに、いいねも保存も伸びない」「フォロワーは増えても、それが来店や問い合わせにつながっている実感がない」――住宅・不動産業界の広報や店舗担当者から、こうした声を聞くことが増えています。写真は綺麗に撮っているし、投稿頻度も落としていない。それでも数字が動かないと、何をどう変えればいいのか分からなくなってしまうものです。
そんなときに参考になるのが、実際に長期間にわたってInstagram運用を続けている企業アカウントの「型」を分解してみることです。今回は、注文住宅業界の中でも知名度の高いタマホームの公式Instagramアカウント(@tamahome_official)を題材に、公開されている情報をもとに運用の特徴を整理します。数字を誇張したり、確認の取れないフォロワー数やエンゲージメント率を並べたりすることはせず、「なぜこの投稿の型が機能しているのか」「自社のアカウントにどう応用できるのか」という視点に絞って解説していきます。
タマホームのInstagram運用、まず全体像を整理する
タマホームは戸建て注文住宅を中心に、全国規模で店舗展開している住宅会社です。公式アカウント「@tamahome_official」に加えて、屋島店・米子支店・福岡支店グループ・熊本店・松山支店など、支店単位でもInstagramアカウントを運用しているのが大きな特徴です。本部が発信する全国向けのブランディング投稿と、各支店が発信する地域密着型の集客投稿とを役割分担させている構図が見えてきます。
これは中小の工務店や店舗ビジネスにとっても参考になる考え方です。「本部アカウント=ブランドの世界観と大型施策」「支店・店舗アカウント=地域のお客様との距離が近い情報発信」という二層構造にすることで、全国向けの発信力と、地域ごとの反響の取りやすさを両立させることができます。1つのアカウントに全部を詰め込もうとして、誰に向けた発信か曖昧になってしまう企業は少なくありません。

なぜ「フォロー&いいねキャンペーン」を継続しているのか
タマホームの公式Instagramを語るうえで欠かせないのが、継続的に実施されているプレゼントキャンペーンです。懸賞情報サイト「Koubo」やタマホーム公式Instagramの投稿履歴を確認すると、フォロー・いいねを応募条件にしたキャンペーンが「第28弾」「第53弾」といった形で回を重ねて継続実施されていることが分かります。賞品にはロボット掃除機やトースターなどの家電のほか、スズキ・スーパーキャリイなどの軽自動車といった高額商品も含まれており、単発の施策ではなく「定例化された企画」として運用されている点が特徴です。
ここで重要なのは、キャンペーンを一度きりで終わらせず、シリーズ化している点です。単発キャンペーンは開催期間中だけフォロワーが増えて、終了後に一気にフォロー解除される「離脱」が起きやすいという弱点があります。一方でシリーズ化すると、「またタマホームがキャンペーンをやっている」という期待値がフォロワーの中に定着し、通知が来るたびにアプリを開いてもらえる、いわば“定期接触の習慣化”を作り出せます。応募方法も「フォロー+いいね」というシンプルな設計にとどめている点も、離脱率を抑えるうえで重要なポイントです。
投稿の型を分解する|"作品集"から抜け出す工夫
住宅会社のInstagramが陥りがちな失敗は、竣工写真を並べるだけの「施工事例の作品集」になってしまうことです。美しい住宅写真は確かに映えますが、フォロワーからすると「自分ごと化」しにくく、保存やコメントにはつながりにくい傾向があります。
タマホームをはじめ、住宅・不動産業界でInstagram活用が進んでいるアカウントに共通するのは、投稿を大きく次の3タイプに分けて役割を持たせている点です。
| 投稿タイプ | 目的 | 反応を狙う仕掛け |
|---|---|---|
| 施工事例・住宅写真 | ブランドイメージの構築、保存誘導 | 間取りや工夫ポイントをキャプションで解説し「保存して参考にしたい」と思わせる |
| キャンペーン・プレゼント企画 | フォロワー獲得、継続的な接触 | フォロー+いいねのみで参加できる設計、シリーズ化による期待感の醸成 |
| スタッフ・支店の日常発信 | 親近感の醸成、来店・問い合わせのハードルを下げる | 地域の支店アカウントが担当し、担当者の顔が見える発信にする |
この3タイプを意識的に配分することで、「見て終わり」の投稿を減らし、保存・フォロー・問い合わせという異なるアクションを狙い分けることができます。自社アカウントの投稿を棚卸しして、この3タイプのどこに偏っているかを確認するだけでも、改善の糸口が見えてきます。
世界観のつくり方|ターゲットに刺さる見せ方の設計
住宅購入層のボリュームゾーンは20代後半〜40代のファミリー層です。この世代はSNSでの情報収集に慣れており、総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、インターネット利用の目的として「SNSの利用」を挙げた割合は全体で81.9%と、あらゆる用途の中で最も高い水準にあります。住宅という高額かつ検討期間の長い商材だからこそ、検討期間中に繰り返し接触できるSNSの重要性は年々増しています。
タマホームのアカウント設計を見ると、「高品質・適正価格」というブランドの核となるメッセージを、派手な演出ではなく生活のリアルな延長線上として見せている点が特徴です。過度に高級路線に振らず、かといって安売り感も出さない、ターゲット層の生活水準に寄り添った見せ方のバランス感覚が、フォロー継続の理由の一つと考えられます。
自社に置き換えるときのポイントは、「誰の生活の一部として見られたいか」を先に言語化することです。世界観は色味やフォントだけで作るものではなく、「どんな暮らしをしている人に、どんな頻度で、どんな話しかけ方をするか」という接客スタンスの延長として設計する必要があります。
エンゲージメントを生む導線設計
キャンペーンで一時的にフォロワーを増やしても、その後の投稿で離脱されては意味がありません。タマホームのアカウント運用から読み取れるのは、次のような導線の作り方です。
- キャンペーン投稿と施工事例投稿を交互に配置し、フォローした直後のタイムラインで「参考になる情報発信もしているアカウントだ」と認識させる
- キャプションで具体的な数値や仕様(価格帯、間取りの工夫など)に触れ、保存する動機を作る
- 支店アカウントでは、担当者名や店舗名を明記し、コメント欄でのやり取りを歓迎する姿勢を見せる
- ストーリーズやハイライトを使って、キャンペーンの応募方法や当選者発表など「今すぐ見なければいけない情報」を整理する
Instagramは国内の月間アクティブアカウント数が6,600万を超えているとMeta社が公表しており(2023年11月時点、日経クロストレンド報道)、ユーザーの可処分時間の奪い合いは激しくなっています。だからこそ「フォローしてよかった」と思わせる小さな体験の積み重ねが、離脱を防ぐ最大の防御策になります。
数字で見る、住宅・不動産業界がInstagramに力を入れる理由
なぜ住宅会社がこれほどSNSに投資するのか、公開されているデータから背景を整理します。
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」では、SNS利用率は年代によって差はあるものの、20代・30代を中心に高い水準で定着していると報告されています。
- Meta社は国内のInstagram月間アクティブアカウント数が6,600万を突破していることを明らかにしており(2023年11月時点、日経クロストレンド報道)、ポータルサイトやチラシに依存しない集客チャネルとしての存在感が増しています。
- Owned株式会社がPR TIMESで公開した不動産業界向けレポート「Instagram活用によるブランド力強化・人材採用・販路拡大戦略」では、Instagramをブランディングだけでなく採用強化や販路拡大にも活用する「8つの実践戦略」が紹介されており、住宅・不動産業界における活用の広がりを裏付けています。
これらのデータが示すのは、Instagramがもはや「若者向けの補助的な発信ツール」ではなく、検討期間の長い高額商材においても、ブランド構築・採用・集客を横断する経営インフラになりつつあるという事実です。
明日から試せるチェックリスト
タマホームの事例から学べるポイントを、自社アカウントですぐに点検できる形に落とし込みました。
- 投稿の役割分担ができているか:施工事例(保存狙い)、キャンペーン(フォロワー獲得)、日常発信(親近感)の3タイプの比率を直近20投稿で数えてみる
- キャンペーンは単発になっていないか:一度きりで終わらせず、「第◯弾」のように継続できる設計にできないか検討する
- 応募条件は複雑すぎないか:フォロー+いいねなど、1〜2アクションで完結する設計にする
- 本部と店舗(支店)の発信を分けられているか:全国向けの世界観発信と、地域密着の接客的発信を同じアカウントで混同していないか確認する
- キャプションに「保存したくなる情報」が入っているか:見た目の写真だけでなく、価格帯・仕様・工夫点などの具体情報を添えているか
- コメント欄への返信体制があるか:問い合わせ前の質問がコメント欄に来た際、誰がどのくらいの頻度で返信するか決まっているか
すべてを一気に変える必要はありません。まずは自社の直近の投稿を上のチェックリストに当てはめ、どの項目が弱いかを特定するところから始めるのが現実的です。
中小の工務店・不動産会社が陥りやすい落とし穴
タマホームのような全国規模の企業の事例を見ると、「予算も人員も違うから真似できない」と感じるかもしれません。しかし、応用できる部分とできない部分を切り分けることが重要です。
真似しやすいのは、投稿の役割分担、キャンペーンのシリーズ化、キャプションでの具体情報の提示といった「運用の型」の部分です。一方で、予算をかけた大規模なプレゼント企画をそのまま真似する必要はありません。地域の工務店であれば、地元の飲食店とのコラボ景品や、施主インタビュー動画への協力謝礼といった、身の丈に合った継続企画に置き換えることができます。重要なのは景品の豪華さではなく「継続すること」と「参加のハードルを下げること」です。
まとめ
タマホームのInstagram運用を分解すると、派手な一発芸ではなく、キャンペーンのシリーズ化、投稿の役割分担、本部と支店の二層構造による発信という、地道な設計の積み重ねであることが見えてきます。総務省の統計が示すようにSNS利用は生活のインフラとなっており、Instagramの国内利用者規模も大きく、住宅・不動産業界での活用事例も増え続けています。だからこそ、規模の大小にかかわらず「型」を理解し、自社の体力に合わせて再現することが、遠回りに見えて最も確実な近道になります。
他の業種・業態のSNS運用がどのような型で成果を積み重ねているかは、unyouの事例データベース(/cases)でも確認できます。同業種・類似業態の事例と合わせて、自社アカウントの改善ポイントを探ってみてください。
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