YVES SAINT LAURENT BEAUTYのInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/2
「憧れブランドのSNS、何をどう真似すればいいか分からない」という悩み
「うちのブランドも世界観のあるアカウントを作りたい」「海外の高級ブランドみたいに、おしゃれで統一感のある投稿をしたい」——SNS担当者やマーケティング担当者と話していると、こうした声を本当によく耳にします。特に美容業界では、Instagramが単なる告知ツールではなく、ブランドの世界観そのものを伝える主戦場になっているため、プレッシャーはなおさら大きいはずです。
一方で、「高級ブランドは予算も知名度も違うから、自社に応用できる話ではない」と諦めてしまうのも早計です。実際にアカウントの投稿設計を分解していくと、予算規模に関係なく真似できる「型」や「考え方」が数多く見つかります。この記事では、フランス発のラグジュアリービューティーブランド「YVES SAINT LAURENT BEAUTY(イヴ・サンローラン・ボーテ、以下YSL Beauty)」のInstagram運用を、公開情報をもとに分析し、中小規模の企業や店舗アカウントでも応用できるポイントに落とし込んでいきます。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など、裏付けの取れない数値は本記事では扱いません。

なぜ今、美容ブランドにとってInstagram運用がますます重要なのか
具体的な分析に入る前に、美容業界においてInstagramがなぜここまで重視されているのか、公開データで確認しておきましょう。
まず、Instagram自体の利用規模です。総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、日本国内における主なソーシャルメディア系サービス・アプリの利用率(全年代)は、LINEが91.1%、Instagramが52.6%、X(旧Twitter)が43.3%、Facebookが26.8%となっており、Instagramは国内で2番目に利用率の高いSNSです。また同白書では、インターネットの利用目的・用途として「SNS(無料通話機能を含む)の利用」が81.9%と最も高い割合を占めることも示されています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。
Instagramを運営するMeta自身も、プラットフォームの成長を継続的に発表しています。日本国内の月間アクティブアカウント数について、Metaは2019年公表時点の3,300万人から、2023年11月時点で6,600万以上へと4年間で倍増したと公表しています(出典:Meta Japan公式発表)。世界全体で見ても、Instagramの月間アクティブユーザー数は継続的に拡大しており、プラットフォームとしての存在感は年々増しています(出典:Meta公式発表)。
さらに重要なのは、美容領域における「SNSと購買行動の結びつき」の強さです。PR TIMESに掲載された美容・コスメ領域の調査リリースでは、化粧品の購入を決める際に参考にした情報として「一般ユーザーの投稿」が40.7%、「インフルエンサーの投稿」が39.2%、「企業・店舗公式の投稿」が16.8%という結果が示されています(出典:PR TIMES掲載調査リリース)。また、別の調査では美容に関心の高い層の81.3%が「SNSをきっかけに美容・コスメ商品を購入した経験がある」と回答しており、そのうち58.7%がリピート購入に至っているというデータも公開されています(出典:PR TIMES掲載調査リリース)。
つまり、美容ブランドの公式投稿は「一般ユーザーやインフルエンサーの声」と並ぶ、購買を左右する情報源の一つとして機能しているということです。この前提を踏まえた上で、YSL Beautyの運用を見ていきましょう。
YSL Beautyのブランドポジショニングと世界観のつくり方
YSL Beautyは、ハイブランド「Saint Laurent(サンローラン)」のビューティーラインとして、メイクアップ・スキンケア・フレグランスを展開するブランドです。Instagram運用においてまず特徴的なのは、ブランドの世界観を象徴する「顔」を明確に立てている点です。
日本市場では、モデルのローラが「イヴ・サンローラン・ボーテ」初のジャパンアンバサダーに就任し、メイクアップ・スキンケア・フレグランスの全カテゴリーを横断して活動しています。また、2023年12月にはTWICEのSanaがジャパンアンバサダーに就任し、東京でのポップアップストアのプロモーションなど、複数のタッチポイントでブランドの顔として起用されています(出典:公開されているプレスリリース・報道情報)。
このように「誰がブランドを体現するか」を明確にすることは、投稿一枚一枚の世界観にブレを生じさせない土台になります。アンバサダーのビジュアルを軸にすることで、新作コスメの発売、キャンペーン、イベントなど、投稿の目的が変わっても「同じ世界観の中の出来事」として受け手に認識させやすくなるのです。
さらにYSL Beautyは、K-POPグループのJO1とコラボレーションし、ファンデーション「オールアワーズ リキッド」の新CMをWeb限定で公開し、あわせて「YSL BEAUTY ZONE」と呼ばれるバーチャルイベントを展開するなど、単発の投稿だけでなく複数のコンテンツ・企画を連動させたキャンペーン設計を行っています(出典:公開されているプレスリリース・報道情報)。単一の投稿で完結させず、CM・イベント・SNS投稿を一つの世界観のもとに束ねている点が特徴です。
エンゲージメントを生む仕掛け:ハッシュタグと「360度タッチポイント」戦略
YSL Beautyの施策で興味深いのは、Instagramの投稿単体で完結させず、オフラインの体験とオンラインの発信を意図的につなげている点です。
美容業界向けメディアの取材記事によると、YSL Beautyは製品発売イベントにおいて、公式ハッシュタグ(例:「#ヴォリュプテオイル」)の周知を徹底しており、会場内の随所にハッシュタグを記載したパネルを設置するほか、配布する製品パンフレットにも同じハッシュタグを明記しているといいます(出典:SMMLab掲載記事「ハッシュタグ活用が決め手?!YSLに学ぶInstagram活用事例」)。来場者がその場で写真を撮り、指定のハッシュタグを付けて投稿したくなる導線を、会場設計の段階から作り込んでいるということです。
またMarkeZine掲載のインタビュー記事では、担当者が「取り入れられるタッチポイントはすべて取り入れ、フルで強化する」という基本方針のもと、360度さまざまな接点で顧客とブランドが出会える状態を作ることを重視しており、新しいタッチポイントが登場すればできるだけ早く取り入れて挑戦する姿勢を明かしています(出典:MarkeZine掲載記事)。Instagramのフィード投稿・ストーリーズ・リールといった機能はもちろん、イベント・パンフレット・CMなど、オンラインとオフラインの境界を意識せずに「ブランド体験全体」として設計している点が、他の美容ブランドとの違いとして読み取れます。
YSL Beautyの運用から読み取れる「型」を整理する
ここまでの分析を、投稿設計の「型」として整理すると次のようになります。
| 型・施策 | 具体的な内容 | 狙い |
|---|---|---|
| アンバサダー起用 | ローラ、Sana(TWICE)など、ブランド世界観を体現する人物を明確に設定 | 投稿ごとのブランドイメージのブレを防ぎ、認知獲得と憧れの醸成を両立 |
| クロスメディア連動 | JO1とのコラボCM+バーチャルイベント「YSL BEAUTY ZONE」 | 単発投稿で終わらせず、複数接点で同じ世界観を反復して届ける |
| 会場発ハッシュタグ設計 | イベント会場のパネルやパンフレットに公式ハッシュタグを明記 | 来場者のUGC(ユーザー投稿コンテンツ)を意図的に誘発する |
| 360度タッチポイント戦略 | 新しい機能・接点を積極的に取り入れる基本方針 | プラットフォームの変化に対応し、接触機会を最大化する |
この4つの型は、いずれも「予算があるから真似できない」ものではなく、考え方として中小規模のアカウントにも応用できます。次章で、自社アカウントに落とし込む具体的な手順を見ていきましょう。
中小企業・個店アカウントに応用できる具体的ポイント
YSL Beautyほどの規模でなくても、次のような形で同じ考え方を実践に落とし込むことができます。
1. 「誰がブランドを体現するか」を決める 経営者本人、店長、スタッフ、あるいは特定の常連客やインフルエンサーなど、アカウントの「顔」を最低一人は明確にしましょう。顔が定まると、投稿のトーン・服装・話し方に一貫性が生まれ、フォロワーが「このアカウントらしさ」を認識しやすくなります。
2. 単発投稿ではなく「連動企画」で設計する 新商品やキャンペーンを行う際は、「フィード投稿だけ」で終わらせず、ストーリーズでの裏側公開、リールでの使用シーン、来店時のPOPや会話での告知など、複数の接点を同じテーマで束ねて設計しましょう。YSL BeautyのCM×バーチャルイベントのように、大掛かりである必要はなく、「投稿・店頭・接客」の3点を揃えるだけでも十分です。
3. 独自ハッシュタグを「オフラインの導線」から作る 公式ハッシュタグをSNS上だけで告知するのではなく、店頭POP、レシート、パッケージ、名刺など、オフラインの接点にも明記しましょう。お客様が「その場で撮って、そのまま投稿できる」状態を作ることが、UGC発生の最大のポイントです。
4. 新機能への対応を後回しにしない リール、コラボ投稿、Instagramショップなど、プラットフォームが新しく提供する機能は、早期に試すこと自体が接点を増やす施策になります。「効果が出るか分からないから様子見する」のではなく、小さく試して学習するスタンスを持ちましょう。
明日から試せるチェックリスト
実際にアカウント運用へ落とし込む際は、以下の項目から着手すると取り組みやすくなります。
- アカウントの「顔」となる人物(スタッフ・経営者・アンバサダー的存在)を1名以上決めている
- 直近1ヶ月の投稿を並べたときに、色味・トーン・雰囲気に一貫性があるか確認した
- 新商品・キャンペーン告知を、フィード投稿だけでなくストーリーズ・リール・店頭でも連動させる計画を立てた
- 独自ハッシュタグを1つ決め、店頭・パッケージ・レシートなどオフラインの接点にも明記した
- お客様が写真を撮りたくなる「撮影スポット」や「見せ方」を店舗・商品に用意した
- リールやコラボ投稿など、直近半年以内に追加された新機能を最低1つ試した
- 一般ユーザーの投稿(UGC)を定期的に検索・収集し、リポストやコメントで反応する運用フローがある
これらは特別な予算がなくても始められるものばかりです。まずは1つずつ、今週中に着手できるものから取り組んでみてください。
まとめ
YSL Beautyの運用を分析すると、その世界観は単に「おしゃれな写真を撮る」ことだけで成立しているわけではなく、アンバサダーという軸の設定、複数施策を連動させるキャンペーン設計、そしてオフラインの接点からオンラインのUGCを誘発する仕掛けといった、意図的な設計の積み重ねであることが見えてきます。総務省の統計が示す通りInstagramは国内で高い利用率を持つプラットフォームであり、PR TIMES掲載の調査が示す通り美容領域では公式投稿・一般ユーザー投稿の双方が購買に直結しています。だからこそ、ブランドの世界観と顧客の自発的な発信をどう両立させるかという設計思想は、規模の大小を問わず参考にする価値があります。まずは本記事のチェックリストから、自社アカウントで実践できる部分を1つずつ試してみてください。
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